お疲れ様です。労災系ブロガーめかヴです。
精神障害の労災認定は、発症に関連したと思われる職場での出来事について、労基署に提出した申立書の内容や、職場への聞き取り調査から得た情報を踏まえ、規定のチェックリストの項目に照らし合わせて判断されます。
この記事では、そのチェックリストにあたる(具体的出来事)※厚労省発行パンフレット「精神障害の労災認定」 から、特に労災認定に関連する項目をまとめました。
もしあなたが今、職場のトラブルが原因で精神疾患を被ってしまった場合、もしくは、その可能性がある場合、それが労災認定の条件に当てはまるかどうかを、ざっくり判断する参考になれば幸いです。
また、当ブログでは、質問に回答すれば自動で判定してくれるWebアプリを公開しています。
精神障害の労災認定チェッカー - はじめての労働災害 (first-rosai.com)
はじめに ~労災認定の目安~
労基署の調査の結果、精神障害の発症に関連したと思われる職場での出来事が、それぞれ心理的負荷の強度「弱」「中」「強」の3段階に分類され、その個数によって、労災認定されるかどうか判断されます。
心理的負荷「強」となる具体的出来事 ⇒ 1つでもあれば労災認定される可能性あり
心理的負荷「中」となる具体的出来事 ⇒ 複数あれば、トータルで心理的負荷「強」と判断され 、 労災認定される可能性あり
心理的負荷「弱」となる具体的出来事 ⇒ 原則、数がどれだけあっても労災認定には影響しません。(なので、本記事では割愛します)
業務外での心理的負荷や、個体側要因と見なされる事柄があった場合、労災認定を巡っては不利になります。
注意事項
- 当記事の内容は労災認定を保証するものではありません。具体的な相談は、職場を管轄する労働基準監督署か警察署(生活安全課 or 刑事課)などへお願いします。
- 実際は、各出来事の心理的負荷の強度 「弱」「中」「強」 を判断する前段階で、平均的な心理的負荷の強度「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」という項目にそれぞれ当てはめるのですが、 「平均的な心理的負荷の強度(Ⅲ)⇒ 心理的負荷の強度(強)」、 「平均的な心理的負荷の強度(Ⅱ)⇒ 心理的負荷の強度(中)」と判断されるものと仮定しています。実際には、そうならないことの方が多いと思うので、当記事はあくまで参考程度にして下さい。
- 労災申請の際は、録音、メモ、第三者の証言など、証拠を確実に揃えましょう。証拠が不十分だと、例えば、平均的な心理的負荷が「Ⅲ」の出来事にも関わらず、心理的負荷の強度が「中」や「弱」と判定されることが、ざらにあり得ます。
- 当記事は、労災認定を目当てとする申立て事実の誇張・捏造などの不正行為を推奨・助長するものではありません。
1.心理的負荷の強度「強」と判断される具体例一覧(6項目)
下記6項目のうち、1つでも認められれば、労災認定される可能性があります。
☐ 業務において重度の病気やケガをした。
例:
・約2か月以上の入院を要した、現職への復帰ができなくなる後遺障害が残った。
・業務上の傷病により6ヵ月を超えて療養中の場合、当該傷病により社会復帰が困難な状況にあった、
又は死の恐怖や強い苦痛を感じた。☐ 業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした。
例:
・業務に関連し、他人に重度の病気やケガ(約2か月以上の入院を要するもの、
又は現職への復帰ができなくなる程度のもの)を負わせた。
・他人に負わせたケガの程度は重度ではないが、事後対応に多大な労力を費やした。
(減給・降格などのペナルティや、職場の人間関係が著しく悪化したなど)☐ 会社の経営に影響するなど重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった。
☐ 退職を強要された。
例:
・退職の意思がないことを表明しているにもかかわらず、執拗に退職を求められた。
・恐怖感を抱かせる方法で退職勧奨された。
・突然解雇の通告を受け、理由が説明されず、または説明を求めても応じられず、撤回されなかった。☐ 上司等から身体的攻撃、精神的攻撃などのパワーハラスメントを受けた。
例:
・治療を要する程度の暴行など、身体的攻撃を受けた。または、治療を要しない程度の暴行を執拗に受けた。
・次のような精神的攻撃が執拗に行われた。
─ 人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性の無い、
または業務の目的を明らかに逸脱した精神的攻撃
─ 必要以上に長時間に渡る厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、
態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
・上記に満たない程度の身体的・精神的攻撃であったが、会社に相談しても、適切な対応が無く、改善されなかった。厚生労働省発行のパンフレット「精神障害の労災認定」(令和2年9月改訂版) (具体的出来事)より抜粋
☐ 同僚等から、暴行またはひどいいじめ・嫌がらせを受けた。
例:
・治療を要する程度の暴行など、身体的攻撃を受けた。または、治療を要しない程度の暴行を執拗に受けた。
・人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた。
・上記に満たない程度の身体的・精神的攻撃であったが、会社に相談しても、適切な対応が無く、改善されなかった。
2.心理的負荷の強度「中」と判断される具体例一覧(20項目)
下記20項目のうち、複数の事柄が認められれば、それらが複合して心理的負荷「強」とみなされ、労災認定される可能性があります。
(セクシュアルハラスメントについては、程度によっては単独で心理的負荷「強」と判断される場合があります。具体例をご参照ください。)
☐ 業務において、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした。
例:
・約2か月以上の入院を要した、現職への復帰ができなくなる後遺障害が残った。
・業務上の傷病により6ヵ月を超えて療養中の場合、当該傷病により社会復帰が困難な状況にあった、
又は死の恐怖や強い苦痛を感じた。☐ 会社で起きた事故、事件について責任を問われた。
☐ 自分の関係する仕事で多額の損失などが生じた。
☐ 業務に関連し、違法行為を強要され、それに従わされた。
☐ 達成困難なノルマが課された。
☐ 業務上のノルマが達成できず、なおかつそれに対するペナルティがあった。(昇進の遅れなど)
☐ 新規事業の担当になった。または、会社の建て直しの担当になった。
☐ 顧客や取引先から無理な注文を受け、何らかの事後対応を行った。(大幅な値下げ、納期の繰上げ、度重なる設計変更、など)
☐ 業務に関連して、顧客や取引先からクレームを受けた。
☐ 仕事内容・仕事量の大きな変更を感じさせる出来事があった。
☐ 1か月に80時間以上の時間外労働を行った。
☐ 業務上やむを得ない事情により、12日以上に渡って連続労働を行った。
☐ 配置転換があった。(転居を伴うものを除く)
☐ 転勤をした。
☐ 複数名で担当していた業務を1人で担当するようになり、業務内容、業務量に何らかの変化があった。
☐ 非正規社員であるとの理由等により、仕事上での差別、不利益な取扱いを受けた。(業務の遂行から除外・排除される等)
☐ 上司とのトラブルがあった。
例:
・業務指導の範囲内である強い指導、叱責を受けた。
・業務を巡る方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が上司との間に生じた。☐ 同僚とのトラブルがあった。
例:
・業務を巡る方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が同僚との間に生じた。☐ 部下とのトラブルがあった。
例:
・業務を巡る方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が部下との間に生じた。☐ セクシュアルハラスメントを受けた。
例:
・胸や腰などへの身体接触を含むセクシャルハラスメントであっても、行為が継続しておらず、
会社が適切かつ迅速に解決し発病前に解決した場合
・身体接触のない性的な発言のセクシュアルハラスメントであって、発言が継続してない場合
・身体接触のない性的な発言のセクシュアルハラスメントであって、複数回行われたものの、
会社が適切かつ迅速に対応し、発病前にそれが終了した場合参考【心理的負荷「強」になるセクシュアルハラスメントの例】:
厚生労働省発行のパンフレット「精神障害の労災認定」(令和2年9月改訂版) (具体的出来事)より抜粋
・胸や腰などへの身体接触を含むセクシャルハラスメントであって、行為が継続して行われた場合
・胸や腰などへの身体接触を含むセクシャルハラスメントであって、行為は継続していないが、
会社に相談しても、適切な対応が無く、改善されなかった。
または、会社に相談した後、職場の人間関係が悪化した場合
・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、
発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた場合
・身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、
会社がセクハラがあると把握していても、適切な対応が無く、改善されなかった。
3. 業務外の心理的負荷について
業務外のプライベートで以下のような出来事があった場合、業務外の心理的負荷によって発病したとみなされ、労災認定の上で不利になる可能性があります。
・配偶者と離婚、または別居した
・自分が病気やケガをした
・配偶者や子供、身内に不幸があった。または病気やケガをした
・親類の誰かで、世間的にまずい行動をした人が出た
・多額の財産を損失した、または突然大きな支出があった
・天災や火災などに遭った、または犯罪に巻き込まれた
・騒音など、家の周囲の環境(人間関係を含む)が悪化した
・知人とのトラブルがあった
・親しい友人や先輩に不幸があった
・失恋、異性関係のもつれがあった
・隣近所とのトラブルがあった
厚生労働省発行のパンフレット「精神障害の労災認定」(令和2年9月改訂版) (具体的出来事)より抜粋
4. 個体側要因について
精神障害の既往歴や、アルコール依存、薬物依存などの経験がある場合、 同じく、業務外の心理的負荷によって発病したとみなされ、 労災認定の上で不利になる可能性があります。
ただし、この「個体側要因」については、予想だにしない理由を引き合いに出され、労災不認定の決定を出されることがあります。
(私の場合ですが、「中学でイジメにあっていた」「〇〇の病気が疑われる」という2点を、顕著な個体側要因として挙げられたので、異議を申し立てました。)
もし、労災の不支給決定を出され、調査結果を確認した結果、理由が納得のいかないものであれば、上位の都道府県労働局に、きちんと「不服申し立て」を行いましょう。
まとめ
精神障害の労災認定については、発症した原因が、どこまでが業務内で、どこからが業務外なのかについて、現在も議論されているとは思いますが、正直な話、担当する労基署の職員の間でも基準が定まっていないのが現状だと思います。
(業務において強い心理的負荷があったことを労基署に主張しても、うやむやな理由で認められなかった、等の話はよく見かけます。)
これは、職場の人権問題、例えば、どこからが指導でどこからがパワハラに該当するか、についても同様です。
他の記事でも述べていることですが、労災関連の知識について、各々が関心を持っておくことで、何が社会通念と照らし合わせてアウトなのか、ということについて留意することが重要と考えます。
以上、ここまで読んで頂きありがとうございました。